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『ナッジで、人を動かす』が初見だと読み辛い!
大学の課題で、『ナッジで、人を動かす』を読んでレポートを書くというものがあった。
面白そうな本だと意気込んで読み進めるも、中々内容が入ってこない。
そんな体験をした自分が、この本を読みやすくするためにあれこれ考えた結末を公開する。

難解さの原因は、「ヨコモジ」にある?
この本の難解さは、単語の意味が混じり合ったり、微妙に汲み取れないことにあると感じた。理解を深めるためには、言葉の定義や解釈をはっきりとさせておく必要がありそうだと考えた。
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序盤、政府を評価する際には、福利(ウェルフェア)、自律(オートノミー)、尊厳(ディグニティ)、自治(セルフガバメント)の基準を持っておくことが必要である。それぞれのOxford Languagesによる言葉の定義はこうである。
福利:幸福と利益。幸福をもたらす利益。
自律:自分の気ままを押さえ、または自分で立てた規範に従って、自分のことは自分でやって行くこと。
尊厳:尊く、おごそかで、犯してはならないこと。気高く威厳があること。
自治:自分(たち)の事をみずから処理すること。特に、地方公共団体や大学が、その範囲での行政・事務を自主的に行うこと。
自治と自律の違いは、自律が自分の定めたルールに従うことを指すのに対し、自治はそうでないところにある。
そしておそらく、自律、尊厳、自治という言葉は、本質的に自由という言葉でまとめることができる。Oxford Languagesによる定義は次の通り。
自由:他からの束縛を受けず、自分の思うままにふるまえること。
自分で自分の行動を決定できるという点で、自律と自治の意味合いが含まれる。そして、自分の人生を主体的に決定できる自由は、人間が尊厳をもって生きるための基盤と言える。強制、差別などは人の尊厳を傷つけ、自由を奪う。
よって政府を評価する際、おおまかに自由と福利の価値基準を用いることができ、自由を、自律、尊厳、自治と読み替えることのできるものと考える。
自由と福利を守るため、強制はなるべく避けなければならない。そこで登場するのがナッジである。ナッジとは、英語で「軽くつつく」といった意味を持つ言葉で、人々の選択の自由を保持しつつ、ある方向へ進むようそっと背中を押すような仕組みのことを指す。ナッジの例として、デフォルトルールがあげられる。これは、消費者がすでに設定されているデフォルトルールにとどまる傾向があることを利用している。会社の年金プランを自動加入にするだけで、社員の貯蓄率は上昇するのである。そして年金プランの解除は任意であり、そこで選択の自由は保護される。催促や警告、GPSなどもナッジである。しかし、税金や罰金、懲罰刑といった相当規模以上の物質的インセンティブを伴うものは、ナッジとは言えない。「軽くつつく」というニュアンスからかけ離れてしまい、選択の自由を損なってしまう可能性があるからだ。
本書には、選択的アーキテクチャという言葉も登場する。選択的アーキテクチャは、人々の選択の背景となる条件、と記述されている。天気も一種の選択的アーキテクチャと言える。選択的アーキテクチャとはなにか?を述べるChapter2の序盤では、ほとんどナッジに関して説明しており困惑した。しかしよく考えてみると、ナッジは選択的アーキテクチャに含まれる要素の一部と考えることができる。選択的アーキテクチャには、選択をしやすくしたり特定の行動を促したりするものがある。そして、特定の行動を促すもののなかにナッジのような特定のアプローチが含まれるのである。数学風に考えると、選択的アーキテクチャという集合の中にナッジという部分集合が含まれている様子を想像すればよい。よって、選択的アーキテクチャとナッジの間には密接な関係があることが理解できる。
選択的アーキテクチャを限定的に「人間が意図的に作るデザイン」と定義することもできる。しかし、人々が受ける影響を俯瞰して評価する場合、広義の定義が望ましい。
ナッジと選択的アーキテクチャの区別に苦戦したが、さらに頭を混乱させるワードが登場する。それは、パターナリズムである。さらに、リバタリアン・パターナリズムという言葉も登場する。Wikipediaによる説明は次の通り。
パターナリズム:強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。
具体的には、実力不足でも即解雇にはならない雇用制度や、年功序列制度などがパターナリズムに該当する。一般的に雇用制度や年功序列制度は個人が選択できるものではないため、パターナリズムにおいて選択の自由は制限されていると言える。(しかし、パターナリズムというだけで一概に良し悪しを判断できるものではない。)そして、選択の自由と介入の双方を尊重する立場をリバタリアン・パターナリズムという。リバタリアンは個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する立場である。 ここで、ナッジとリバタリアン・パターナリズムの違いがわからなくなってくるが、ナッジとは、リバタリアン・パターナリズムを支持する理論であると考えればしっくりくる。
参考
Oxford Languages:https://languages.oup.com/google-dictionary-ja/
Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/